群とは
空(くう)ではない集合 (G) があり、そこに含まれる要素のことを元 (element) と呼ぶことにします。元と元との間に何らかの算法 (operation, (otimes)と表現します)が定義され、その算法の結果も必ず集合 (G) に含まれるとします。このような集合 (G) が、次の三つの条件を満たすとき、その集合を群 (group) とよびます。

- 結合則の成立: 任意の元 (g, h, k) 、( g otimes (hotimes k)=(gotimes h)otimes k ) を満たす。
- 単位元の存在: 任意の元 (g) に対して、 (g otimes e = e otimes g =g ) となるような元 (e) が存在する ((e) を単位元と呼ぶ)。
- 逆元の存在: 任意の元 (g) に対して、 (g otimes x = x otimes g = e) となるような元 (x)が存在する ((x) を(g) の逆元と呼び、(g^-1) と表現する)。
単位元 (e) しか含まれない集合も群ですし、元が無限個あるような群もあります。ある元とその逆元が同一になることもあります。さらに次の条件を満たすとき、アーベル群あるいは可換群といいます。
- 交換則: 任意の元 (g, h) 、( g otimes h =h otimes g ) を満たす。
抽象的な定義で分かりにくいですね。具体Ex.を挙げながら群の性質を見ていきます。
行列を元とする群
行列は、積や和などが定義可能な線形代数表現です。行列の積や和は条件1 (結合則)を満たすので、うまく行列を集めれば群を作ることができます。Note:以降は、行列は全て正方行列であり、群の算法はかけ算であるとします。また、いちいち算法((otimes))の記号を書くのも冗長ですので省略します。行列を並べて書いたらそれはかけ算だと思ってください。
行列を元とする群があったとすると、そこには必ず単位行列が含まれるはずです (条件2 単位元の存在)。また、どんな元にも必ず逆元を持たないといけません(条件3 逆元の存在)から、正則行列 (= 逆行列をもつ = 行列式 (determinant) がゼロではない)である必要もあります。もちろん、群から任意の元を二つ取り出して掛算した結果は、群のいずれかの元に一致しなければいけないという大前提もあります。行列の演算は可換ではありません (かけ算の順序を変えると結果が異なることがある)ので、条件4 (交換則)を満たすとは限りません。
具体Ex.
以上を踏まえて具体Ex.を見てみましょう。Ex.えば、4行4列の単位行列((e))を一つだけ含む集合は、群となります。単位行列の逆元はそれ自身です。
$$ begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix}
$$ 単位行列((e))と、その符号を全てマイナスにした行列((-e))の、二つを含む集合も、群となります。それぞれが、自分自身の逆元となります。
$$
begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}-1&0&0&0 0&-1&0&0 0&0&-1&0 0&0&0&-1 end{pmatrix}
$$belowのような4つの行列も群となります。最後の二つは互いに逆元の関係になっています。$$
begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}-1&0&0&0 0&-1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}0&1&0&0 -1&0&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}0&-1&0&0 1&0&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix}
$$元の数は無限にあっても構いません。Ex.えば4列目の1~3行目が (r) (任意の実数) の倍数であるようなbelowの集合も群となります。$$
cdots,
begin{pmatrix}1&0&0&-r 0&1&0&-r 0&0&1&-r 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&r 0&1&0&r 0&0&1&r 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&2r 0&1&0&2r 0&0&1&2r 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
cdots,$$
群に含まれる元の数を、位数といいます。直上のEx.では、位数は無限ということになります。
generator
generator (generator)とは、その名の通り群を生成する元のことです。ある群 (G) の中からなるべく少ない個数の元 (s_1, s_2, cdots) を選び、それら及びそれらの逆元 (s_1^{-1}, s_2^{-1}, cdots) を何回でも好きなだけかけ合わせて (同じものを使っても構わない)、もし群 (G) の元をすべて網羅することができたら、 (s_1, s_2, cdots) を群 (G) のgeneratorであるといいます。
Ex.えば、先ほども挙げたbelowの場合 (分かりやすくするため (s_1, s_2, cdots) と記号を振ります)、$$
s_1=begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
s_2=begin{pmatrix}-1&0&0&0 0&-1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
s_3=begin{pmatrix}0&1&0&0 -1&0&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix} ,
s_4=begin{pmatrix}0&-1&0&0 1&0&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1 end{pmatrix}
$$ (s_3)を選び、それを何回もかけ合わせると、 (s_3^2 = s_2, s_3^3 = s_4, s_3^4= s_1) という関係が見出されますので、 (s_3) はこの群のgeneratorであるといえます。同様に (s_4) もこの群のgeneratorです。一方、(s_2) は (s_2^2 =s_1, s_2^3 =s_2) のように (s_1) しか生み出せませんから、この群のgeneratorとは言えません。また、(s_1) (単位元) も (s_1) しか生み出せないのでやはりこの群のgeneratorとは言えません。
上のEx.では (s_3) あるいは (s_4) がgeneratorでした。どちらか一つを選べばよく、両方を選ぶ必要はありません。このように、ある群のgeneratorが1つだけで表現できるとき、その群は巡回群 (cyclic group) である、といいます。「巡回」という言葉からは、上のEx.のような元の数 (位数) が有限の場合に限定されるような気がします。しかし位数が無限の群だとしても、generatorが1つだけであれば、巡回群です。無限(infinite)巡回群ということもあります。たとえば「具体Ex.」の最後に示した群の場合は、$$
begin{pmatrix}1&0&0&-r 0&1&0&-r 0&0&1&-r 0&0&0&1 end{pmatrix} or begin{pmatrix}1&0&0&r 0&1&0&r 0&0&1&r 0&0&0&1 end{pmatrix}$$がgeneratorとなります。
行列とsymmetry operation
別ページで説明している通り、すべてのsymmetry operationは4×4正則行列のユークリッド変換で表現することが出来ます。point groupやspace groupとは、symmetry operationを元とする群のことです。「操作が元である」とはイメージしにくい表現ですね。操作が作用するのは、何らかの物体の座標です。ある操作によって物体の座標を別の座標に写すということは、線形代数的には物体の座標に同じ次元の正方行列をかけることと等価です。つまり、座標に作用する「操作」とは、座標にかけあわせる「行列」とみなすことができます。以降では、行列とは単に数値を縦横に並べたものではなく、symmetry operationの性質をもつのだと思って読み進めて下さい。
point group
point groupは、並進(平行移動)を含まず、原点を不動にするようなsymmetry operationを組み合わせてできる群です。並進を含まないsymmetry operationには回転、回反、centre of symmetry、鏡映がありますが、それらが原点を不動にするような操作である時、アフィン変換行列の4列目は 必ず 0,0,0,1 になります1。
並進を含まないsymmetry operation: ( begin{pmatrix}
A_{11} & A_{12} & A_{13} & 0
A_{21} & A_{22} & A_{23} & 0
A_{31} & A_{32} & A_{33} & 0
0 & 0 & 0 & 1
end{pmatrix}
= begin{pmatrix}
huge{A} & begin{matrix}0 end{matrix}
begin{matrix}0&0&0end{matrix} & 1
end{pmatrix})
4行目と4列目が 0,0,0,1 の行列をどのように掛け合わせても、4行目と4列目は 0,0,0,1 になりますので、簡単のために以降は (A) の部分だけでsymmetry operationを表現することにします。
具体Ex.
Ex.えば(Z)軸と一致する(2)回rotation axisをもつ対称性は、belowのような2つの行列からなる群であると言えます。1つ目がidentity operation(単位行列)、2つ目が180度rotation operationを表します。これはpoint group(2)に対応します。$$ begin{pmatrix}1&0&0 0&1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}-1&0&0 0&-1&0 0&0&1 end{pmatrix}
$$もし、このpoint group(2)に、belowのように90°rotation operation(3つ目)も加えたらどうなるでしょう。ちょっと考えたら分かりますが、2つ目と3つ目の掛け算の結果として4つ目の270°rotation operationも加えないと、群として成立しません。4つ揃ってpoint group (4) となります。$$
begin{pmatrix}1&0&0 0&1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}-1&0&0 0&-1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}0&1&0 -1&0&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}0&-1&0 1&0&0 0&0&1 end{pmatrix}
$$今度は、point group (2) に(Z)軸に垂直なreflection operation(3つ目)を加えてみましょう。先ほどと同じような理屈で4つ目のcentre of symmetry操作((bar{1}))が必然的に生み出されてしまいます。これがpoint group (2/m) です。
$$
begin{pmatrix}1&0&0 0&1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}-1&0&0 0&-1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0 0&1&0 0&0&-1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}-1&0&0 0&-1&0 0&0&-1 end{pmatrix}
$$最後のEx.として、(Y) 軸に一致する180°rotation operation(3つ目)も加えてみましょう。やはり4つ目のsymmetry operation((X) 軸に一致する180°rotation operation)が生み出されてしまいます。これら4つでpoint group (222) となります。
$$
begin{pmatrix}1&0&0 0&1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}-1&0&0 0&-1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}-1&0&0 0&1&0 0&0&-1 end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0 0&-1&0 0&0&-1 end{pmatrix}
$$
このように、もとのpoint groupに別のsymmetry elementを加えていくことで、次々と別のpoint groupを生成することが出来ます。
space group
space groupの群としての構造を行列で表現する場合、アフィン変換の表現、i.e.,4×4行列を使う必要があります。並進を考慮しなければいけないからです。またこの行列が変換するのは、mとかÅのような長さの次元をもつ座標ではなく、単位lattice vector (a, b, c) をそれぞれ何倍するかを示す分率座標 ((u v w 1)) であることにご注意ください。最後の1はダミー次元です。実際の空間での座標は (ua+vb+wc) となります。ベクトル (a, b, c) は長さが違うかもしれませんし、直交するとも限りません。
以降の説明では、 (u, v, w) を (X, Y, Z) 軸に対応させた分率座標空間を考えます。Ex.えば (X) 軸方向に (x) 進むということは、 (a) ベクトルを (x) 倍した量だけ進むという意味になります。
並進群
crystalは単位格子並進で空間を埋め尽くすような物質です。3次元の単位格子並進操作は、
$$cdots,
begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&0 0&0&1&-1 0&0&0&1end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&1 0&1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&1 0&0&1&0 0&0&0&1end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&0 0&0&1&1 0&0&0&1end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&1 0&1&0&1 0&0&1&0 0&0&0&1end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&1 0&1&0&0 0&0&1&1 0&0&0&1end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&1 0&0&1&1 0&0&0&1end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&1 0&1&0&1 0&0&1&1 0&0&0&1end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}1&0&0&2 0&1&0&1 0&0&1&1 0&0&0&1end{pmatrix} , cdots $$
のような、左上3行3列が単位行列で4列1~3行にあらゆる整数を含む、無限個の(アフィン変換)行列の集合で表現することができます。すべてを書き下すことはできないので、belowのような書き方でこの無限個の集合を表現することにします。
( begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix}) where、(n_1, n_2,n_3)はすべての整数
この集合が群の構造を持つことは、ここまで読んだ方なら容易に理解できるでしょう。単位元は (n_1 = n_2 = n_3=0) とすればよいですし、逆元は (n_1, n_2,n_3) の符号を反転するだけです。このような群を、並進群といいます。何の面白みもない群ですが、space groupは必ず並進群をsubgroupとして含みますので、超重要です。Note:、上で示した並進群は単純格子に対応しており、このタイプの並進群だけを含むspace groupが (P1) です。並進群には、この他に底心格子、体心格子、面心格子に対応するものがあります。belowに列記します。以降は (n_1, n_2, n_3) がすべての整数を表すとします。
底心(C)の並進群
$$ begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&n_1+frac{1}{2} 0&1&0&n_2+frac{1}{2} 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix} $$
体心格子の並進群
$$ begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&n_1+frac{1}{2} 0&1&0&n_2+frac{1}{2} 0&0&1&n_3+frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix} $$
面心格子の並進群
$$ begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2+frac{1}{2} 0&0&1&n_3+frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&n_1+frac{1}{2} 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3+frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&n_1+frac{1}{2} 0&1&0&n_2+frac{1}{2} 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix} $$
くどいようですが、 (n_1, n_2, n_3) はすべての整数を表しています。並進group elementの数は無限個であることを忘れないようにしてください。
並進群+symmetry operation
point groupの時と同様に、並進群に別のsymmetry elementを加えることで新しいspace groupを生み出していきましょう。
まず、space group(P1)にcentre of symmetry操作を加えてみましょう。群として成立するためには、belowのような行列集合のすべてを元として含まないといけません。1つ目の行列集合が並進操作で、2つ目の集合がcentre of symmetry操作に対応します。centre of symmetry操作をひとつ加えたつもりでも、並進操作によって増殖し、無限個の集合となることに注意しましょう。これがspace group(Pbar{1}) のmatrix representationです。
$$ begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}-1&0&0&n_1 0&-1&0&n_2 0&0&-1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix}
$$
今度は (P1) に (Y) を軸とする (2_1) らせん操作を加えてみます。これはspace group (P2_1) に対応します。
$$ begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}-1&0&0&n_1 0&1&0&n_2+frac{1}{2} 0&0&-1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix}$$
(X, Y, Z) 軸がすべて (2_1) らせん操作であると考えてみます。2, 3, 4つめの行列はそれぞれ (X, Y, Z) 軸と一致する (2_1) らせん操作に対応します。これはspace group (P2_12_12_1) に対応します。
$$ begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&n_1+frac{1}{2} 0&-1&0&n_2 0&0&-1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}-1&0&0&n_1 0&1&0&n_2+frac{1}{2} 0&0&-1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}-1&0&0&n_1 0&-1&0&n_2 0&0&1&n_3+frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix}$$
並進群を (C) 底心格子として、(Y) 軸に垂直な (c) 映進面操作を考えてみましょう。2つめが (C) 底心操作、3つめが (c) 映進操作に対応し、4つめは2つめと3つめの積で現れる操作((Y=1/4) 面に位置する (n) 映進面)です。これがspace group (Cc) です
$$ begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&n_1+frac{1}{2} 0&1&0&n_2+frac{1}{2} 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&-1&0&n_2 0&0&1&n_3+frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&n_1+frac{1}{2} 0&-1&0&n_2+frac{1}{2} 0&0&1&n_3+frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix} $$
いくつかのEx.を見てもうお分かりだと思いますが、space groupの性質を理解するためには、単位格子ひとつ分のsymmetry operationの関係をみるだけで十分です。また各行列の左上3行3列の部分だけを取り出せば、point groupの構造とよく似ていることにも気づかれると思います。この類似性 は別ページで解説します。
らせん操作や映進操作が作る群
らせん操作や映進操作も並進をともなうsymmetry operationです。ここでは並進群のことはいったん忘れて、たとえば (X) 軸に一致する (2_1) らせん操作$$S=begin{pmatrix}1&0&0&frac{1}{2} 0&-1&0&0 0&0&-1&0 0&0&0&1end{pmatrix}$$をgeneratorとするとどんな群を得られるか考えてみましょう。(j)を任意の整数として、$$ S^{2j}=begin{pmatrix}1&0&0&j 0&1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1end{pmatrix}$$という関係が容易に見出されますから、(S)をgeneratorとする群はbelowのような2種類の行列集合のすべてをふくみます。
( begin{pmatrix}1&0&0&n 0&1&0&0 0&0&1&0 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&frac{1}{2}+n 0&-1&0&0 0&0&-1&0 0&0&0&1end{pmatrix}
) where(n)はすべての整数
一つ目の行列集合は (X) 軸方向のみの並進群です。一方向のみとはいえ並進群を含みますから、この集合も立派なspace groupということになります。
今度は、 (YZ) 平面に一致して、並進量が ((0, frac{1}{2}, frac{1}{2})) であるような (n) 映進操作$$N=begin{pmatrix}-1&0&0&0 0&1&0&frac{1}{2} 0&0&1&frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix}$$ をgeneratorとしてみましょう。やはり$$ N^{2j}=begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&j 0&0&1&j 0&0&0&1end{pmatrix}$$ という関係を考慮すれば、belowのような二つの行列集合を元とするような群であると考えることができます。
( begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&n 0&0&1&n 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}-1&0&0&0 0&1&0&frac{1}{2}+n 0&0&1&frac{1}{2}+n 0&0&0&1end{pmatrix}
) where(n)はすべての整数
一つ目の行列集合は (Y+Z) 軸方向の並進群です。これもやはりspace groupです。
最後に (XY, YZ, ZX) 面のそれぞれに (n) 映進操作 (それぞれ(N_1, N_2, N_3)とします)であるような状況を考え、これらをgeneratorとして群を作ってみましょう。$$
N_1=begin{pmatrix}1&0&0&frac{1}{2} 0&1&0&frac{1}{2} 0&0&-1&0 0&0&0&1end{pmatrix}, N_2=begin{pmatrix}-1&0&0&0 0&1&0&frac{1}{2} 0&0&1&frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix}, N_3=begin{pmatrix}1&0&0&frac{1}{2} 0&-1&0&0 0&0&1&frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix}
$$(j_1, j_2, j_3)を任意の整数とすれば、belowのような関係が容易に導かれます。$$
N_1^{2j_1}=begin{pmatrix}1&0&0&j_1 0&1&0&j_1 0&0&1&0 0&0&0&1end{pmatrix}, N_2^{2j_2}=begin{pmatrix}1&0&0&0 0&1&0&j_2 0&0&1&j_2 0&0&0&1end{pmatrix}, N_3^{2j_3}=begin{pmatrix}1&0&0&j_3 0&1&0&0 0&0&1&j_3 0&0&0&1end{pmatrix}
$$(j_1, j_2, j_3)は任意の整数でしたから、(j_3+j_1, j_1+j_2, j_2+j_3)も任意の整数です。つまり、3次元の並進群が生み出されたわけです。また、(N_1, N_2, N_3) から2つあるいは3つ選んでかけあわせると、$$
N_1 N_2 = begin{pmatrix}-1&0&0&frac{1}{2} 0&1&0&1 0&0&-1&-frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix},
N_2 N_3 = begin{pmatrix}-1&0&0&-frac{1}{2} 0&-1&0&frac{1}{2} 0&0&1&1 0&0&0&1end{pmatrix},
N_3 N_1 = begin{pmatrix}1&0&0&1 0&-1&0&-frac{1}{2} 0&0&-1&-frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix} ,
N_1 N_2 N_3 = begin{pmatrix}-1&0&0&0 0&-1&0&0 0&0&-1&-1 0&0&0&1end{pmatrix}
$$という関係が導かれます。既に並進群があることが分かっているので、4列目の1~3行 は (1 rightarrow 0) 、(-frac{1}{2} rightarrow frac{1}{2}) と変換しても一般性を失いません。最初の3つは、それぞれ (N_1 N_2: Z=X=frac{1}{2})、(N_2 N_3: X=Y=frac{1}{2})、(N_3 N_1: Y=Z=frac{1}{2}) という直線と一致する2回rotation operationに対応します。最後のひとつは原点に位置するcentre of symmetry操作を意味します。結局、(N_1, N_2, N_3) をgeneratorとする行列を書き下すと、belowのようになります。これはspace group (Pnnn (=P 2/n 2/n 2/n)) に対応するmatrix representationです。$$
begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&frac{1}{2}+n_1 0&1&0&frac{1}{2}+n_2 0&0&-1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}-1&0&0&n_1 0&1&0&frac{1}{2}+n_2 0&0&1&frac{1}{2}+n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&frac{1}{2}+n_1 0&-1&0&n_2 0&0&1&frac{1}{2}+n_3 0&0&0&1end{pmatrix}
begin{pmatrix}-1&0&0&frac{1}{2}+n_1 0&1&0&n_2 0&0&-1&frac{1}{2}+n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}-1&0&n_1&frac{1}{2}+n_2 0&-1&0&frac{1}{2}+n_3 0&0&1&1 0&0&0&1end{pmatrix},
begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&-1&0&frac{1}{2}+n_2 0&0&-1&frac{1}{2}+n_3 0&0&0&1end{pmatrix} ,
begin{pmatrix}-1&0&0&n_1 0&-1&0&n_2 0&0&-1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix} $$
以上の議論からわかるように、screw axis操作や映進面操作を元に持つような群は、必然的に並進群を伴うことになります。言い換えると、screw axis操作や映進面操作は、space group(crystal)だけが持つsymmetry operationです。
Footnotes
- 並進を伴わないからといって、アフィン変換行列の4列目が 0, 0, 0, 1 になるとは限りません。Ex.えば、(Z)軸に垂直で(Z=w)を通る鏡映は $$begin{pmatrix}
1&0&0&0
0&1&0&0
0&0&-1&2w
0&0&0&1
end{pmatrix}$$のように表現できますが、この行列は2回かけると単位行列に戻ります。 ↩︎