このページではsubgroup・factor groupの概念を、抽象的な話にならないよう具体的なpoint groupやspace groupをEx.に挙げて説明していきます。
subgroup
「2.2. Concepts of Groups, Point Groups, and Space Groups」ページで、群に何らかのsymmetry operationを付け加え、次々と別の群を作り出していきました。作り出された新しい群には、もとのgroup elementがそのまま含まれています。一般に、ある群の部分集合が群の性質を満たすとき、それをsubgroup (subgroup)といいます。一方、ある群を部分集合として含む全体集合が群の性質を満たすとき、それを超群 (supergroup)といいます。たとえばpoint group (2) はpoint group (2/m) のsubgroupですし、point group (2/m) はpoint group (2) の超群です。要するに、群にも上下関係があるということです。
subgroupの概念は、crystalの相転移現象を理解する際に役に立ちます。なぜならcrystalが、何らかの外的要因の変化(Ex.えば温度低下)に伴って相転移するとき、相転移前後のspace groupが超群/subgroupの関係になることがあるからです。このような相転移は、原子の位置がわずかに変化するような場合(変位型相転移)によくみられ、その結果twin構造やantiphase domainが形成されます。subgroupの概念は、このような構造を解析する際の手がかりになります。
subgroupには、共役subgroupや正規subgroupと呼ばれるものがあります。簡単に説明します。
共役subgroupと正規subgroup
群 (G) とそのsubgroup (H) があるとします。群 (G) から元を一つ選び ((g) とします)、subgroup (H) の全ての元 (Ex.えば (h_n) ) に対して、(g^{-1}h_ng) を計算してできる集合を、(H’ = g^{-1}H g) と表現することにしましょう。このとき、(H’)も群(G)のsubgroupとなるという性質があります。(H’) と (H) の関係を共役1といい、(H’) と (H) は共役subgroup (conjugate subgroup)である、といいます。さらに、群 (G) の全ての元 ((g)) (g^{-1}H g=H) が成立するような場合(i.e., (g H = H g) が成立する場合)、(H) を正規subgroup (normal subgroup)といいます。分かりにくいですね。belowに具体Ex.を示します。
Ex.えばpoint group (4) はbelowの(h_0, h_1, g_0, g_1) が元であり、(h_0, h_1)だけを選ぶとpoint group (2) になります。Note:、(e)は単位行列(identity operation)の意味です。
$$h_0=e=begin{pmatrix}1&0&0 0&1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
h_1=begin{pmatrix}-1&0&0 0&-1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
g_0=begin{pmatrix}0&1&0 -1&0&0 0&0&1 end{pmatrix} ,
g_1=begin{pmatrix}0&-1&0 1&0&0 0&0&1 end{pmatrix}
$$このとき、(g_0^{-1} h_0 g_0 =h_0, quad g_1^{-1} h_0 g_1= h_0, quad g_0^{-1} h_1 g_0 = h_1, quad g_1^{-1} h_1 g_1 =h_1) という関係があります。Therefore,、point group (2) はpoint group (4) の正規subgroupであるといえます。
point group(3 2) は、三回rotation axisと、それに直交する二回rotation axisが3本存在するという対称性です。belowのような6つの行列が元となります。$$
begin{array}{lll}
t_0=e=begin{pmatrix}1&0&0 0&1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,&
t_1=begin{pmatrix}-frac{1}{2}&-frac{sqrt{3}}{2}&0 frac{sqrt{3}}{2} & -frac{1}{2}&0 0&0&1 end{pmatrix} ,&
t_2=begin{pmatrix}-frac{1}{2}&frac{sqrt{3}}{2}&0 -frac{sqrt{3}}{2} & -frac{1}{2}&0 0&0&1 end{pmatrix},
a_0=begin{pmatrix}1&0&0 0&-1&0 0&0&-1 end{pmatrix} ,&
a_1=begin{pmatrix}-frac{1}{2}&frac{sqrt{3}}{2}&0 frac{sqrt{3}}{2} & frac{1}{2}&0 0&0&-1 end{pmatrix} ,&
a_2=begin{pmatrix}-frac{1}{2}&-frac{sqrt{3}}{2}&0 -frac{sqrt{3}}{2} & frac{1}{2}&0 0&0&-1 end{pmatrix}
end{array}$$ (e)と(a_0)の集合はsubgroupです。同様に、(e)と(a_1)の集合、(e)と(a_2) の集合もsubgroupです。それぞれをsubgroup (A_0, A_1, A_2) と呼ぶことにします。主軸の方向は異なりますが、どれも記号としてはpoint group (2) です。where、(A_0, A_1, A_2) は正規subgroupではありません。Ex.えば (A_0) ((e)と(a_0)の集合) 、 ( t_1^{-1} a_0 t_1 = a_1 ) となってしまうからです。だからと言って、(A_0, A_1, A_2) が互いに無関係というわけでもありません。既に示したように ( t_1^{-1} a_0 t_1 = a_1 ) ですから、( t_1^{-1} A_0 t_1 = A_1 ) であることが分かります。同様に、( t_2^{-1} A_0 t_2 = A_2 ) となります。i.e.,、(A_0, A_1, A_2) は共役subgroupの関係であるといえます。
ところで、subgroupが正規subgroupであることが分かったら、どのような場面で役に立つのでしょうか。Ex.えば実際の相転移に伴う微細組織(twinやantiphase domain)を観察したとして、「これは正規subgroupに変化した結果である」などと判断することはおそらく困難です。正直に言って、実験や観察が主体のcrystal学者にとって、即効薬になるような概念ではありません。正規subgroupが力を発揮するのは、後述する剰cosetからfactor groupを作るときです。正規subgroupを法とすると左剰cosetと右剰cosetが等しくなるという性質があるからです。もとのpoint groupやspace groupから何らかのsymmetry operationを差し引いたら、どのような群になるのかを考える際に役に立ちます。
剰coset・factor group
剰cosetとは、ある群をそのsubgroupで割り算(のようなことを)して分類したものです。そのsubgroupが正規subgroupであれば、剰coset同士は群を作りそれをfactor groupと呼びます。こんな説明で分かったら苦労しませんよね。belowに、もう少し丁寧に説明します。
(G) を群とし、その正規subgroupを (H) とします。(G) から2つの元 (g_1) と (g_2) を選んで (g_1^{-1} g_2) を計算し、それが正規subgroup (H) の元のどれか (仮に(h_n)) と一致したとき、「 (g_1) と (g_2) は同じ仲間(同値関係)である」と定義2しましょう。

ここで、(g_1^{-1} g_2 = h_n Leftrightarrow g_2 = g_1 h_n) という関係がありますから、(g_1) とその仲間たちは、(g_1)に(h_1, h_2, h_3 cdots) のいずれかを掛けたものになるはずです。この集合を (g_1 H) と表記すると、$$ g_1 H ={g_1 h | h in H}$$と表すことが出来ます。群論では、この (g_1 H) を 「(g_1) を含む剰coset」3といいます。
具体Ex.を見てみましょう。足し算を算法とする整数全体の集合(群)を(G)、3の倍数の集合(subgroup)を(H)とします。(0)を含む剰cosetは当然(H)そのものです。$$ 0 H = {0+h | h in H}$$

1を含む剰cosetはどうでしょうか。( 1 H ={1 + h | h in H}) ということですから、要するに3で割って1余る整数の集合ということになります。同様に2を含む剰cosetは、3で割って2余る整数の集合( 2 H ={2 + h | h in H})となります。このようにして、整数全体の集合(群) (G) は、( 0 H (=H), 1 H, 2 H) という三つの剰cosetに分けることが出来ました。

ところで、三つの剰cosetの内、群としての構造を持つのは (0 H =(H)) のみであり、これは正規subgroupです。一方、(1 H) と (2 H) は群ではありません4。where、(0 H, 1 H, 2 H) の間には重要な関係があります。実は、正規subgroupをもとにして分類した剰coset同士の関係は、必ず群の性質を満たします。この場合、剰coset同士の算法を 「それぞれの剰cosetからひとつずつ任意に取り出した要素同士の足し算」 と定義すれば、三つの剰coset ( 0 H, 1 H, 2 H) を元とする集合は群となるのです。もちろん単位元は (0 H) です。
群論では、このような各剰cosetを元とみなして作られる群を、Ex.えば 「3の倍数からなる正規subgroupを法とするfactor group」のように表現します。記号としては、 (G/H) のように表現します。 Note:、どんな群に対しても剰cosetを作ることは可能ですが、それがいつでもfactor groupになるわけではありません。factor groupになるためには、法とする群 (直前のEx.では (H)) が正規subgroupの場合に限ります。
point groupの剰coset・factor group
point groupを使った剰cosetのEx.を示しておきましょう。point group (4/m) はbelowの8つの行列が元となります。$$
begin{array}{l,l,l,l}
e=begin{pmatrix}1&0&0 0&1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,&
s_1=begin{pmatrix}-1&0&0 0&-1&0 0&0&1 end{pmatrix} ,&
s_2=begin{pmatrix}0&1&0 -1&0&0 0&0&1 end{pmatrix} ,&
s_3=begin{pmatrix}0&-1&0 1&0&0 0&0&1 end{pmatrix}
s_4=begin{pmatrix}1&0&0 0&1&0 0&0&-1 end{pmatrix} ,&
s_5=begin{pmatrix}-1&0&0 0&-1&0 0&0&-1 end{pmatrix} ,&
s_6=begin{pmatrix}0&1&0 -1&0&0 0&0&-1 end{pmatrix} ,&
s_7=begin{pmatrix}0&-1&0 1&0&0 0&0&-1 end{pmatrix}
end{array}$$
この中から (e) と (s_1) を選ぶと正規subgroup(point group (2) )になります。このsubgroupを (eH) と呼びましょう。(eH) の元に、たとえば (s_2) を掛けると、(s_2 e = s_2, s_2 s_1 = s_3) となり (s_3) を掛けると (s_3 e = s_3, s_3 s_1 = s_2) となりますから、 (s_2) と (s_3) は同じ剰cosetであることが分かります。これを (s_2H) と呼ぶことにしましょう。同様に、(s_4) と (s_5) 、(s_6) と (s_7) も同じ剰cosetであり、それぞれ (s_4H, s_6H) と呼びます。 これらの剰cosetの集合は「 (eH) (=point group (2) )を法とするfactor groupである」ということができます。

さて、このfactor groupの構造を改めて眺めてみると、(eH) と (s_2H) の間には180°rotation operationの関係があり、(s_4H) と(s_6H) も同様の関係があります。このほかにも、(eH)と(s_4H) の間や(s_2H)と(s_6H) の間にreflection operationなどが見つかります。もうお分かりですね、そうです、このfactor groupは point group (2/m) の構造と同じになっているのです。要するに「point group (4/m) に対してsubgroupであるpoint group (2) を法としてfactor groupをつくると、それはpoint group (2/m) と同値構造である」というわけです。厳密さは欠けますがより直感的な表現として 「point group (4/m) からpoint group (2) の成分を除去するとpoint group (2/m) の性質が残る」、あるいは「point group (4/m) をpoint group (2) で割るとpoint group (2/m) になる」 といい換えてもいいでしょう。factor groupの記法は (G/H) のように書きますから、この場合は ((4/m)/(2))となるわけです。割り算の記号がしっくりきますね。point groupのsubgroup は「5.2. Crystal Family Point Groups and Their Subgroups」のページでさらに詳しく解説します。
space groupの剰coset・factor group
最後に、space groupの剰余 考えます。space group (Pnnn) をEx.とします。このspace groupは、belowのような8つの行列集合で表現することが出来ます。Note:、(n_1, n_2, n_3) は全ての整数を表します。また(e’)は単位行列そのものではなく、単位行列をふくむ行列の集合ですからプライム記号を付けています。他も同様です。
$$
e’=begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
s’_1=begin{pmatrix}1&0&0&frac{1}{2}+n_1 0&1&0&frac{1}{2}+n_2 0&0&bar{1}&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
s’_2=begin{pmatrix}bar{1}&0&0&n_1 0&1&0&frac{1}{2}+n_2 0&0&1&frac{1}{2}+n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
s’_3=begin{pmatrix}1&0&0&frac{1}{2}+n_1 0&bar{1}&0&n_2 0&0&1&frac{1}{2}+n_3 0&0&0&1end{pmatrix}
s’_4=begin{pmatrix}bar{1}&0&0&frac{1}{2}+n_1 0&1&0&n_2 0&0&bar{1}&frac{1}{2}+n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
s’_5=begin{pmatrix}
bar{1}&0&0&frac{1}{2}+n_1
0&bar{1}&0&frac{1}{2}+n_2
0&0&1&n_3
0&0&0&1end{pmatrix},
s’_6=begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&bar{1}&0&frac{1}{2}+n_2 0&0&bar{1}&frac{1}{2}+n_3 0&0&0&1end{pmatrix} ,
s’_7=begin{pmatrix}bar{1}&0&0&n_1 0&bar{1}&0&n_2 0&0&bar{1}&n_3 0&0&0&1end{pmatrix}
$$ (e’) はこのspace groupの並進群であり正規subgroupです。まずは (e’) を法として剰cosetを作ってみましょう。すぐにわかることですが、(s’_1)の中から任意の行列を選びそれを (e’) の中のどの行列と作用させても、その結果は必ず (s’_1) に含まれます。 (s’_2) ~ (s’_7) も同様です。i.e.,aboveの8つの行列集合は、最初から (e’) を法とした剰cosetになっていたということです。(e’) は正規subgroupですから、当然8つの行列集合は群の構造をもちます。(e’) が単位元です。念のため、この場合の算法は「それぞれの行列集合から1つずつ全ての組み合わせで行列を取り出しかけ合わせる」ということです。
space group (Cc) も考えてみましょう。 $$
e’_0=begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
e’_1=begin{pmatrix}1&0&0&n_1+frac{1}{2} 0&1&0&n_2+frac{1}{2} 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix},
s’_2=begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&bar{1}&0&n_2 0&0&1&n_3+frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix},
s’_3=begin{pmatrix}1&0&0&n_1+frac{1}{2} 0&bar{1}&0&n_2+frac{1}{2} 0&0&1&n_3+frac{1}{2} 0&0&0&1end{pmatrix} $$先ほどと同様に、並進群を法としましょう。where、この場合の並進群は (e’_0) だけでなく(e’_1) も含みます。(e’_0) と (e’_1) を合わせて並進群 ( (E)とします)となり、もちろん正規subgroupでもあります。(E) を法として剰cosetを作ります。 (s’_2) から任意の行列を選び、それを (E) から選んだ行列と作用させると、その結果は (s’_2) あるいは (s’_3) の中のどれかと必ず一致します。 (s’_3) の中から任意の行列を選び同じことをしても、やはりその結果は (s’_2) あるいは (s’_3) の中のどれかと一致します5。i.e., (s’_2) と (s’_3) (後半の二つ)は同じ剰cosetということになり、これと (E) (前半の二つ)とをあわせて位数が2のfactor groupが形成されます。
あらためて、並進群を法としてspace groupを剰余した時の、各剰cosetの関係を見てみましょう。いずれのEx.でも、左上の3行3列の部分行列((A) とする) に注目すると、一切の重複がないことに気づくと思います。$$begin{pmatrix}
A_{11} & A_{12} & A_{13} & B_x
A_{21} & A_{22} & A_{23} & B_y
A_{31} & A_{32} & A_{33} & B_z
0 & 0 & 0 & 1
end{pmatrix}= begin{pmatrix}
begin{matrix} large{A} end{matrix} & begin{matrix} large{B} end{matrix}
begin{matrix}0&0&0end{matrix} & 1
end{pmatrix}
$$space group (Pnnn) の場合はもともと (A) の部分の重複はありませんでしたし、space group (Cc) の場合は (A) の部分が同一の行列集合がまとまってひとつの剰cosetになりました。並進群を法として剰余すると、かならずこのような性質が生まれます6。アフィン変換行列の場合、(A) の部分は (A) の部分にしか影響を及ぼしませんから、結局このような剰cosetの関係は (A) の部分だけを取り出した群の構造と同値ということです。そして(A) の部分は、並進を伴わないsymmetry operation (回転、回反、centre of symmetry、鏡映) を表すということを思い出してください。つまり、space groupのsubgroupである並進群を法としてfactor groupを作ると、それはpoint groupと同じ代数的構造を持っている、ということになります7。これがずばりspace groupとpoint groupの群論的関係です。正確さには欠けますが、より直感的な表現として 「space groupから (A) の部分だけ取り出した集合がpoint groupである」 といってもよいかもしれません。aboveの場合、space group (Pnnn) は point group (mmm) と、space group (Cc) は point group (m) に対応します。
subgroup、剰cosetに関連するいくつかの用語
subgroupのindex (Index of a subgroup)
もとの群に対して、あるsubgroupの大きさを示す概念が「index (index)」です。たとえば、(G) のsubgroup (H) があって、(G) の元の半分が (H) に含まれるとき、indexは2となります。有限群のsubgroupを考える場合は、単純に「もとのgroup order / subgroupの位数」 がindexということになります。しかし、この式のままでは無限群へ拡張することが出来ません。より厳密には、(H) の (G) におけるindexは (H) の (G) における剰cosetの個数として定義されます。上で挙げたEx.では、 (Pnnn) を並進群((=P1)) を法として剰余した結果、8つの剰cosetが得られました。つまり、(P1) の (Pnnn) におけるindexは8ということになります。同様に、(P1) の (Cc) におけるindexは4となります
通常、(H) の (G) におけるindexは、 (|G:H|) あるいは ([G:H]) のように表現されます。 英語では、”Index of (H) in (G)”のように表現されることが多いです。
極大subgroup (Maximal subgroup)
日本語では 「最大subgroup」 として表現されることも多いのですが、全てのsubgroupの中で最も大きい(つまりindexが小さい)という意味ではないので、このHPでは極大subgroupと表現します。ある群 (G) のsubgroup (H) が極大subgroupであるための要件は、(H) の超群となるような(G) のsubgroupが ((G) や (H)そのものは除いて) 存在しないことです。群 (G) の極大subgroupが (H) であることは、(H) の極小超群 (Minimal supergroup) が群 (G) であるということと同義です。
Ex.えばpoint group (4) に対してpoint group (2) は極大subgroupです。point group (4) のsubgroupであってpoint group (2) の超群となるような群は存在しないからです。point group (32) の場合、極大subgroupはpoint group (3)と(方位の異なる3つの)point group (2) となります。前者の位数は2であり後者の位数は3ですが、位数の大小は関係ないということに注意しましょう。
space groupの場合、極大subgroupは無限に存在します。Ex.えば並進群のみを含むspace group (P1) の元は
( begin{pmatrix}1&0&0&n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix}) where、(n_1, n_2,n_3)はすべての整数
となりますが、これに対してbelowの元からなるsubgroupは極大subgroupになります。
( begin{pmatrix}1&0&0&p n_1 0&1&0&n_2 0&0&1&n_3 0&0&0&1end{pmatrix}) where、(n_1, n_2,n_3)はすべての整数で、(p)は任意の素数
このsubgroupのindexは (p)です。素数は無限にありますから (P1) の極大subgroupも無限にあるということになります。space groupのsubgroupの考え方 は、「5.3. Subgroups of Space Groups」ページで改めて解説しています。
Footnotes
- 線形代数を学ぶとたびたび出くわすのが、この「共役」という用語です。元 (A, B) があったとして、 (A^{-1} B A) という量はどういう意味をもつのでしょうか。 (A, B) を具体的に何かの座標 ((X)) を変換する行列と考えてみましょう。(A^{-1} B A X) という量を、①まず (X’=A X) を計算し、②次に (X” = B X’) を計算し、③最後に(A^{-1} X”)を計算して得た結果と考えましょう。この一連の作業は、①’ (A) で別の座標系に変換し、②’ (B) を作用させた後、③’ (A^{-1}) によって元の座標系に戻すと解釈することもできるはずです。つまり、左右を挟んでいる (A^{-1}) と(A) は、「 (B) という作用の座標系を変換させる役割」 である、と考えるとすっきりするでしょう。たとえば (A) が (X)軸と一致する-90°rotation operationであり、(B, C) がそれぞれ (Y, Z)軸と一致する90°rotation operationであったとしたら、$$
A=begin{pmatrix}1&0&0 &0&1 &-1&0end{pmatrix},
B=begin{pmatrix}0&0&1 &1&0-1&0&0end{pmatrix},
C =begin{pmatrix}0&-1&01&0&0 &0&1end{pmatrix}= A^{-1} B A
$$このような関係を見出せますから、「 (B) と (C) ((=A^{-1}BA)) は (A) (という座標変換)によって共役(な関係)である」、と表現します。
さらに蛇足ですが、複素数の世界では、(a, b) を任意の実数として、(a+ bi) と(a-bi) は共役であるといったりします。これは複素平面で虚数を反転させるという座標変換に関して共役であるいう意味です。算法は足し算でもかけ算でも構いません。実際に確認してみましょう。ある複素数 ((c+ di)とします)の虚数部を反転((c-di)になる)したあと、算法が足し算とかけ算のケースで場合分けです。
・足し算の場合: (a+bi)を足して (a+c+(b-d)i) となり、再び虚数部分を反転すると (a+c-(b-d)i) を得る。これは(a-bi)と(c+ di)を足したものと等しい。
・かけ算の場合: (a+bi)をかけて (ac-bd-(ad-bc)i) となり、再び虚数部を反転すると (ac-bd+(ad-bc)i) を得る。これは(a-bi)と(c+ di)をかけたものと等しい。
Therefore,、算法が足し算だろうとかけ算だろうと (a+ bi) と(a-bi) は虚数のinversion operationに関して共役です。 ↩︎ - 同値関係をもう少し厳密に説明します。2つの元の間で何らかの比較方法が定義され、その方法の下で (x) と (y) が等しいということを (xsim y)と表すとします。この関係が、① (xsim x) (反射律)、② (xsim y) ならば (ysim x) (対称律)、③ (xsim y) かつ (ysim z) ならば (xsim z) (推移律) という三つの条件を満たした時、(sim)を同値関係といいます。Ex.えば、「3で割って余りを比べる」という比較方法 (i.e., mod 3の世界)の場合は、 (4sim1)とか (16sim-2)と表せるわけです。私たちが小学生のころから使っている等号記号 (=) も、数式や数値の同値関係を表す記号です。 ↩︎
- もちろん正確に言うとこれは左factor groupです。Hに正規subgroupを選んだ場合、左factor groupと右factor groupは等しい((g H = H g))ので左右を区別する必要ありません。 ↩︎
- そもそも(1H)や(2H)は単位元を含んでいませんし、(1)と(4)は(1H)の元だが (1+4=5)は(2 H)の元になったりして、演算も成立しません。 ↩︎
- (E) は正規subgroupなので、わざわざ (s’_3) 確認しなくてもよいのですが、あえて冗長に書きました。 ↩︎
- あるspace group 並進群を法として剰余したら、 (A) の部分が全く同じ剰cosetが生まれたと仮定します。(A) の部分が同じであれば、それらの関係は単なる平行移動(並進)ですから、互いを変換する操作は並進群に含まれるはずです。ところが、並進群を法とするfactor groupにおいて、並進群は単位元としてふるまいます。単位元によってある剰cosetを別の剰cosetに変換することはできません。i.e.,最初の仮定は間違っており、(A) の部分の重複は有り得ないということになります。 ↩︎
- space groupがらせん操作と映進操作の両方とも含んでいない場合は、factor groupとしてではなく、単なるsubgroupとしてpoint groupを含むと考えることもできます。 ↩︎