ReciProは、X線・電子・中性子回折と TEM を扱う研究者・初学者のための、無料・オープンソースの統合結晶学ソフトウェアです。結晶構造データベース、結晶構造とゴニオメーターの可視化、回折パターンや高分解能顕微鏡像のシミュレーション、回折スポットの指数付け解析を、すべてのGUI 上でリアルタイムに連携します。

ダウンロード&インストール
GitHub の 最新リリース から入手できます。
- 通常は ReciProSetup.msi をダウンロード&実行してインストールしてください。初回起動時のみ .NET Desktop Runtime 10 のインストールが促される場合があります。
- msiインストール不可の場合は ReciPro-…-portable.zip を解凍して ReciPro.exe を実行してください。
- SmartScreen の警告時:「詳細情報」→「実行」を選択。
論文・引用情報
ReciPro の機能とアルゴリズムは、次の論文に詳しく記載されています。学術研究で利用された場合は、この論文の引用をお願いします(GitHub リポジトリの「Cite this repository」も利用できます)。
- Seto, Y. & Ohtsuka, M. (2022). J. Appl. Cryst. 55, 397–410. doi:10.1107/S1600576722000139
- 論文 PDF: ReciProSetoOhtsuka2022.pdf
このソフトでできること
- 結晶構造を探す
AMCSD 約21,000件を内蔵し、インストール後すぐオフラインで利用可能です。さらに COD 約52万件もオンデマンドで利用できます。名前・組成・格子定数・密度・対称性で検索が可能です。 - 結晶構造の3D描画
原子・結合・配位多面体・単位胞・格子面を OpenGL でリアルタイムで表示します。数万原子の構造も滑らかにレンダリングします。配色は VESTA 互換です。 - 結晶の対称性を調べる
空間群の対称要素・一般位置の模式図(International Tables Vol. A 様式)、ワイコフ位置、反射条件、面間角などの幾何計算を表示します。 - 回折パターンシミュレーション
X線・電子・中性子の単結晶回折シミュレーションが可能です。運動学的回折に加え、電子線では Bloch 波法による動力学的回折(SAED / PED / CBED/EBSD)のパターン計算することができます。 - ビームと結晶の相互作用を計算する
X線・電子線・中性子線について、許される反射の構造因子、物質中での減衰・透過、原子散乱因子、X線蛍光を計算します(X線は xraylib による異常分散・吸収端込み)。 - TEM/STEM像をシミュレーションする
HRTEM(線形/非線形 TCC)と STEM(BF/ADF/HAADF)像をBloch 波理論で計算します。 - スポットを指数付けする
実験 SAED 画像(TIFF / dm3 / dm4)からスポットを自動検出・フィットし、晶帯軸を総当たり探索(Spot ID)。
典型的な使い方
- 結晶を選ぶ(内蔵データベースを検索、または CIF / AMC ファイルを読み込む)。
- 結晶方位を回すと、ステレオネット・回折図・構造ビューワーなど各ウィンドウが同期して更新。
- 回折パターンやシミュレーション像を確認し、画像・ベクター・回転動画として出力。
主要機能
回折シミュレータ
X線・電子・中性子の単結晶回折パターンをシミュレートします。電子線では運動学/動力学理論を切り替え可能です。
- SAED・PED(歳差電子回折)・CBED/PACBED/LACBED に対応。
- 多結晶 Debye リング、X線の歳差カメラ・背面反射 Laue カメラも。

ビーム相互作用
選択中の結晶が X線・電子線・中性子線とどのように相互作用するかを計算します。上部でビームを切り替えると、許される反射と構造因子、物質中での減衰・透過、各元素の原子散乱因子、X線では特性蛍光線が、まとめて再計算されます。
- 反射の構造因子・2θ、減衰長や透過率、原子散乱因子の曲線、EDX 風の蛍光線を1つのウィンドウで一括表示。
- X線は同梱の xraylib ライブラリにより、異常分散 f′/f″・吸収端・蛍光収率まで考慮。

結晶構造ビューワー
OpenGL による3D結晶構造描画が可能です。原子をクリックすると近接原子との距離・結合角を表示します。
- 格子面・境界面・配位多面体の表示、描画範囲を格子倍数や面指数で指定。
- 回転動画(H.264 / H.265 MP4)を内蔵エンコーダで生成。

対称性情報
選択した空間群の対称性を、International Tables for Crystallography Vol. A の様式で詳しく表示します。対称要素図・一般位置図を描画し、ワイコフ位置・反射条件・面間角などの幾何計算もあわせて確認できます。
- 対称要素・一般位置の模式図をベクター(EMF)/ラスターでクリップボードにコピー。
- 2つの面・方向の間の角度や面間隔、両者に垂直な指数を計算。

ステレオネット(ステレオ投影)
結晶面 (hkl)・晶帯軸 [uvw]・菊池線の方向を、ステレオ投影で表示します。投影面上をドラッグすると結晶が回転し、その方位は他のすべてのウィンドウと共有されます。
- 等角投影(Wulff)と等積投影(Schmidt)、上/下半球、3D 球オーバーレイ表示に対応。
- 構造因子 |F| による重み付け、大円・小円の描画、ラスター/ベクター(EMF)での保存・コピー。

HRTEM / STEM シミュレータ
Bloch 波理論で高分解能 TEM 像・STEM 像を計算します。厚さ–デフォーカスのシリーズ像も一括計算できます。

スポット ID(自動指数付け)
実験で得た SAED 画像を読み込み、回折スポットの逆格子配置に合う結晶方位を総当たりで決定します。高次の晶帯軸も正確に同定します。

こんな方に
電子顕微鏡(TEM)・X線/中性子回折・結晶学に携わる研究者から学生・初学者まで、幅広く使っていただいています。Python 構文のマクロでタスクを自動化できます(例: 結晶を1°ずつ回転させ、各角度の回折図や STEM 像を保存)ので、面倒な作業の自動化にも向いています。
詳しい使い方
チュートリアル、各画面の説明、マクロ例はオンラインマニュアルにまとめています。