はじめに

 空間群は230種類存在し、それらは超群/部分群という階層構造で整理することができます。別ページで説明している通り、空間群の部分群には t-部分群と k-部分群があります。前者は、単位格子のサイズは変化しないが結晶類 (空間群が属する32種類の結晶族点群) が変化するような部分群です。後者は、単位格子のサイズは変化する場合もしない場合もありますが、結晶類は不変に保たれる部分群です。

 このページでは、k-部分群の階層構造(グラフ)を紹介します。k-部分群は結晶類が変化しない部分群ですから、最大でも32個のツリー構造を紹介すれば十分です。このうち結晶類 \(1\), \(\bar{1}\), \(\bar{6}\) はそれぞれ一つしか空間群を含みません。また、結晶類 \(6mm\)と\(6/mmm\)、\(6\)と\(622\)、\(3m\)と\(\bar{3}m\) は同じ階層構造を持っています。結局、意味のある k-部分群の階層構造は26個のグラフにまとめることができます。以下の表は、ある空間群が登場するグラフ番号をまとめたものです。

1\(P1\)47\(Pmmm\)5.1.93\(P4_222\)4.4.139\(I4/mmm\)4.1.185\(P6_3cm\)2.1.
2\(P\bar{1}\)48\(Pnnn\)94\(P4_22_12\)140\(I4/mcm\)186\(P6_3mc\)
3\(P2\)6.3.49\(Pccm\)95\(P4_322\)141\(I4_1/amd\)187\(P\bar{6}m2\)2.2.
4\(P2_1\)50\(Pban\)96\(P4_32_12\)142\(I4_1/acd\)188\(P\bar{6}c2\)
5\(C2\)51\(Pmma\)97\(I422\)143\(P3\)3.4.189\(P\bar{6}2m\)
6\(Pm\)6.2.52\(Pnna\)98\(I4_122\)144\(P3_1\)190\(P\bar{6}2c\)
7\(Pc\)53\(Pmna\)99\(P4mm\)4.3.145\(P3_2\)191\(P6/mmm\)2.1.
8\(Cm\)54\(Pcca\)100\(P4bm\)146\(R3\)192\(P6/mcc\)
9\(Cc\)55\(Pbam\)101\(P4_2cm\)147\(P\bar{3}\)3.3.193\(P6_3/mcm\)
10\(P2/m\)6.1.56\(Pccn\)102\(P4_2nm\)148\(R\bar{3}\)194\(P6_3/mmc\)
11\(P2_1/m\)57\(Pbcm\)103\(P4cc\)149\(P312\)3.2.195\(P23\)1.5
12\(C2/m\)58\(Pnnm\)104\(P4nc\)150\(P321\)196\(F23\)
13\(P2/c\)59\(Pmmn\)105\(P4_2mc\)151\(P3_112\)197\(I23\)
14\(P2_1/c\)60\(Pbcn\)106\(P4_2bc\)152\(P3_121\)198\(P2_13\)
15\(C2/c\)61\(Pbca\)107\(I4mm\)153\(P3_212\)199\(I2_13\)
16\(P222\)5.3.62\(Pnma\)108\(I4cm\)154\(P3_221\)200\(Pm\bar{3}\)1.4.
17\(P222_1\)63\(Cmcm\)109\(I4_1md\)155\(R32\)201\(Pn\bar{3}\)
18\(P2_12_12\)64\(Cmca\)110\(I4_1cd\)156\(P3m1\)3.1.202\(Fm\bar{3}\)
19\(P2_12_12_1\)65\(Cmmm\)111\(P\bar{4}2m\)4.2.157\(P31m\)203\(Fd\bar{3}\)
20\(C222_1\)66\(Cccm\)112\(P\bar{4}2c\)158\(P3c1\)204\(Im\bar{3}\)
21\(C222\)67\(Cmma\)113\(P\bar{4}2_1m\)159\(P31c\)205\(Pa\bar{3}\)
22\(F222\)68\(Ccce\)114\(P\bar{4}2_1c\)160\(R3m\)206\(Ia\bar{3}\)
23\(I222\)69\(Fmmm\)115\(P\bar{4}m2\)161\(R3c\)207\(P432\)1.3.
24\(I2_12_12_1\)70\(Fddd\)116\(P\bar{4}c2\)162\(P\bar{3}1m\)208\(P4_232\)
25\(Pmm2\)5.2.71\(Immm\)117\(P\bar{4}b2\)163\(P\bar{3}1c\)209\(F432\)
26\(Pmc2_1\)72\(Ibam\)118\(P\bar{4}n2\)164\(P\bar{3}m1\)210\(F4_132\)
27\(Pcc2\)73\(Ibca\)119\(I\bar{4}m2\)165\(P\bar{3}c1\)211\(I432\)
28\(Pma2\)74\(Imma\)120\(I\bar{4}c2\)166\(R\bar{3}m\)212\(P4_332\)
29\(Pca2_1\)75\(P4\)4.7.121\(I\bar{4}2m\)167\(R\bar{3}c\)213\(P4_132\)
30\(Pnc2\)76\(P4_1\)122\(I\bar{4}2d\)168\(P6\)2.3.214\(I4_132\)
31\(Pmn2_1\)77\(P4_2\)123\(P4/mmm\)4.1.169\(P6_1\)215\(P\bar{4}3m\)1.2.
32\(Pba2\)78\(P4_3\)124\(P4/mcc\)170\(P6_5\)216\(F\bar{4}3m\)
33\(Pna2_1\)79\(I4\)125\(P4/nbm\)171\(P6_2\)217\(I\bar{4}3m\)
34\(Pnn2\)80\(I4_1\)126\(P4/nnc\)172\(P6_4\)218\(P\bar{4}3n\)
35\(Cmm2\)81\(P\bar{4}\)4.6.127\(P4/mbm\)173\(P6_3\)219\(F\bar{4}3c\)
36\(Cmc2_1\)82\(I\bar{4}\)128\(P4/mnc\)174\(P\bar{6}\)220\(I\bar{4}3d\)
37\(Ccc2\)83\(P4/m\)4.5.129\(P4/nmm\)175\(P6/m\)2.4.221\(Pm\bar{3}m\)1.1.
38\(Amm2\)84\(P4_2/m\)130\(P4/ncc\)176\(P6_3/m\)222\(Pn\bar{3}n\)
39\(Abm2\)85\(P4/n\)131\(P4_2/mmc\)177\(P622\)2.3.223\(Pm\bar{3}n\)
40\(Ama2\)86\(P4_2/n\)132\(P4_2/mcm\)178\(P6_122\)224\(Pn\bar{3}m\)
41\(Aba2\)87\(I4/m\)133\(P4_2/nbc\)179\(P6_522\)225\(Fm\bar{3}m\)
42\(Fmm2\)88\(I4_1/a\)134\(P4_2/nnm\)180\(P6_222\)226\(Fm\bar{3}c\)
43\(Fdd2\)89\(P422\)4.4.135\(P4_2/mbc\)181\(P6_422\)227\(Fd\bar{3}m\)
44\(Imm2\)90\(P42_12\)136\(P4_2/mnm\)182\(P6_322\)228\(Fd\bar{3}c\)
45\(Iba2\)91\(P4_122\)137\(P4_2/nmc\)183\(P6mm\)2.1.229\(Im\bar{3}m\)
46\(Ima2\)92\(P4_12_12\)138\(P4_2/ncm\)184\(P6cc\)230\(Ia\bar{3}d\)

グラフの見方


1. 立方晶系

1.1. 結晶類 \(m\bar{3}m\)

2.5.5.5.

1.2. 結晶類 \(\bar{4}3m\)

2.5.5.4.

1.3. 結晶類 \(432\)

2.5.5.3.

1.4. 結晶類 \(m\bar{3}\)

2.5.3.2.

1.5. 結晶類 \(23\)

2.5.3.1.


2. 六方晶系

2.1. 結晶類 \(6/mmm\), \(6mm\)

2.5.4.4. + 2.5.4.6.

2.2. 結晶類 \(\bar{6}2m\)

2.5.4.5.

2.3. 結晶類 \(622\), \(6\)

2.5.4.1. + 2.5.4.3.

2.4. 結晶類 \(6/m\)

2.5.4.2


3. 三方晶系

3.1. 結晶類 \(3m\), \(\bar{3}m\)

2.5.3.4. + 2.5.3.5.

3.2. 結晶類 \(32\)

2.5.3.3.


3.3. 結晶類 \(\bar{3}\)

2.5.3.2.

3.4. 結晶類 \(3\)

2.5.3.1.


4. 正方晶系

4.1. 結晶類 \(4/mmm\)

2.5.2.7.

4.2. 結晶類 \(\bar{4}2m\)

2.5.2.6.

4.3. 結晶類 \(4mm\)

2.5.2.5.

4.4. 結晶類 \(422\)

2.5.2.4

4.5. 結晶類 \(4/m\)

2.5.2.3.

4.6. 結晶類 \(\bar{4}\)

2.5.2.2.

4.7. 結晶類 \(4\)

2.5.2.1.


5. 直方晶系

5.1. 結晶類 \(mmm\)

2.5.1.6.

5.2. 結晶類 \(mm2\)

2.5.1.5.

5.3. 結晶類 \(222\)

2.5.1.4.


6. 単斜晶系

6.1. 結晶類 \(2/m\)

2.5.1.3.

6.2. 結晶類 \(m\)

2.5.1.2

6.3. 結晶類 \(2\)

2.5.1.1.


脚注

  1. International Tables for Crystallography A (5th ed.)では “IIc“、A1 (1st ed.) では “II (Series of maximal isomorphic subgroups)”と表記される部分群のことです。 ↩︎
  2. たとえばグラフ1.1.では \(Pm\bar{3}m\) と \(Im\bar{3}m\) が両頭矢印で結ばれています。前者から後者への部分群は、前者の格子定数 \(\textbf{a}, \textbf{b}, \textbf{c}\) をすべて2倍にして、一部の点群操作を取り除くことによって生じます。すなわちタイプIIbです。後者から前者への部分群は、格子定数はそのままで、体心格子並進 \((\frac{1}{2},\frac{1}{2},\frac{1}{2})+\) を取り除くことによって生じます。これはタイプIIcです。 ↩︎

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