記号構造の名称空間群
の例
代表的な物質説明
A1面心立方構造
立方最密充填
fcc
\(Fm\bar{3}m\)Al, Cu, Ni, Sr, Rh, Pd, Ag, Ce, Tb, Ir, Pt, Au, Pb, Th 最密充填構造の一つです。単位格子の頂点と全ての面の中心に原子が位置します。平面稠密層を体対角線方向にABCABC…の順にスタッキングしたと考えることもできます。
A2体心立方構造
bcc
\(Im\bar{3}m\)Na, K, V, Cr, Fe, Rb, Nb, Mo, Cs, Ba, Eu, Ta, W単位格子の頂点と体心(格子の中心)に原子が位置します。最密充填ではありません。
A3六方最密充填
HCP
\(P6_3/mmc\)Be, Mg, Sc, Ti, Co, Zn, Y, Zr, Tc, Ru, Cd, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Lu, Hf, Re, Os, Tl最密充填構造の一つです。平面稠密層をABAB…の順にスタッキングした構造です。単位格子は、底面が菱形(内角は60°と120°)の直角柱です。
A3′\(P6_3/mmc\)α-La, Pr, Nd, Pm, Ce, Am, Cm, Bk, Cf最密充填構造の一つです。平面稠密層ABACABAC… の順にパッキングした構造です。単位格子は六方格子になります。
A4ダイヤモンド型\(Fd\bar{3}m\)C, Si, Ge, α-Sn面心立方の格子点に位置する原子に加えて、2×2×2に分割したサブ格子のうち隣り合わない4つのサブ格子の体心位置にも原子が存在します。全ての原子は等価で正四面体的に結合しています。
A5βスズ構造,
白スズ構造 
\(I4_1/amd\)β-Snダイヤモンド構造(A4)が、ある軸の方向に押しつぶされたような構造を持ちます。押しつぶされた軸に\(4_1\)らせん軸が残り、正方晶系となります。
A6インジウム型\(I4/mmm\)In正方晶系の体心格子です。A2構造を一つの方向に引き伸ばした構造です。
A7α-ヒ素型\(R\bar{3}m\)α-As, Sb, Bi歪んだ八配位構造。
A8セレン型\(P3_121\)γ-Se, Te
(SeTe)
\(3_1\) らせん軸に沿って原子が位置する単純な構造です。
A9グラファイト型\(P6_3/mmc\)C
(LiB)
蜂の巣状に結合した平面六方格子のシートがスタッキングした構造です。シート間に強く結合力はなく剥がれやすい性質があります。
A10α-Hg
ABCパッキング
\(R\bar{3}m\)α-HgA1構造と同じく平面稠密層がABCABC…の順にスタッキングしますが、層間の距離が遠くなっています。A1のスタッキングの方向を引き延ばした構造と考えることもできます。Aiの類似構造です。
A11α-Ga\(Cmce\)α-Ga言語化困難。直方晶系。
A12α-Mn\(I\bar{4}3m\)α-Mn単位格子に58個の原子を含む構造。言語化困難。立方晶系。Mnの場合742℃以下で安定。
A13β-Mn\(P4_132\)β-Mn単位格子に20個の原子を含む構造。言語化困難。立方晶系。Mnの場合742-1095 ℃ で安定。
A14ヨウ素型\(Cmce\)I2, Br2二原子分子からなる構造です。分子の中心位置は直方面心格子の格子点と一致します。分子の方向は2つあり、一つの格子軸と直交します。
A15β-タングステン\(Pm\bar{3}n\)β-W
(AとBを区別した場合: Nb3Al, CdV3, Cr3O, Ti3Sb, Ti3Au)
体心格子の格子点位置の原子(A)に加えて、各面上の2つ位置に原子(B)が存在します。前者(A)は12個の原子(B)に囲まれ、原子(B)は直交するが交わらない3方向に直線的に配列します。
A16α-硫黄\(Fddd\)α-S88個の原子が結合し分子を形成しています。
A17黒リン\(Cmca\)P層状に原子が結合し、層間は弱い結合で結ばれます。
A18Cl2構造\(P4_2/ncm\)Cl22原子分子がほぼ一方向 (\(4_2\)らせん軸方向)に配列しています。A14と類似構造です。
A20α-ウラン\(Cmcm\)α-U, Tb, Dy, (Ag,Cd), γ–Tiジグザグに連なった原子鎖が一定方向 (c軸方向) に配列しています。
Aaα-プロトアクチニウム\(I4/mmm\)α-Pa正方晶系の体心格子です。A2構造をある軸の方向に押し縮めた構造です。(注: A6は押し縮めた構造)
Abβ-ウラン\(P4_2/mnm\)β-U平面稠密配置に近い層がc軸方向にスタッキングしたような構造です。
Acα-ネプツニウム\(P4/nmm\)α-Np各原子は2種類のゆがんだ形状の4配位で結合しています。
Adβ-ネプツニウム\(P4/nmm\)β-Np歪んだ四角格子のシートがc軸方向にスタッキングしたような構造です。
Af単純六方格子\(P6/mmm\)HgxSn六方格子の格子点に原子が位置する単純な構造です。
Agボロン\(P4_2/nnm\)B単位格子内に50個の原子を含む複雑な構造です。
Ah単純立方格子\(Pm\bar{3}m\)α-Po単純立方格子の格子点位置に原子が存在するという構造です。これほど単純な構造にもかかわらず、ナンバリングが後半である(つまり発見が遅かった)ことはある意味驚異的なことです。
AiABCパッキング\(R\bar{3}m\)β-PoA1構造と同じく平面稠密層がABCABC…の順にスタッキングしますが、層間の原子間距離が近くなっています。A1のスタッキングの方向を押し縮めた構造と考えることもできます。A10の類似構造です。
Akγ-セレン\(P2_1/c\)γ-monoclinic Se単位格子に64個の原子を含む複雑な構造です。8個の原子が環状に分子を形成しています。
Alβ-セレン\(P2_1/c\)β-monoclinic Se単位格子に32個の原子を含む複雑な構造です。8個の原子が環状に分子を形成しています。