世の中には、たくさんの結晶があります。自然界の結晶(=鉱物)は 6000 種類以上知られていますし、人工的な結晶を含めれば数十万種類を超えるでしょう。それらの結晶の構造(原子配置)を分類する万能の手法は、残念ながらありません。しかし、ある程度単純な (1~3種類程度の元素からなる) 組成の結晶については、元素の種類を区別しなければ同一の構造とみなせる、といったことがよくあります。このような、多くの結晶に共通のひな型構造 (プロトタイプ) を知っておくと、結晶を研究する際に大変役にたちます。
ストラクトゥルベリヒト (Strukturbericht1, 以下SB) タイプとは、古典的な結晶構造の分類手法です。SB記法では、右表に示すアルファベットでその物質の化学的特徴を示し、さらに数字を加えて様々な結晶構造のプロトタイプを表現します。結晶研究の初期の頃はこれでよかったのですが、新しい構造が報告されるたびに数字が増えていき、しかも一旦割り当てた数字がのちに訂正されたりしてだんだんと収集がつかなくなり、1990 年頃を最後にSBタイプの記号は更新されておりません。
ただし、番号の若いSB記号は現在でも広く普及しており頻繁に使われています。例えば、「塩化ナトリウム構造が塩化セシウム構造に相転移する」というよりも 「B1構造がB2構造に相転移」するといったほうがコンパクトで好ましい場面もあるでしょう。本ページではSB記法による分類を紹介します。
各タイプの詳しい説明は以下をご覧ください。