3.1. Symmetry Elements in Detail and Their Graphical Representation

 ここまで何度も登場してきたsymmetry elementですが、個別の詳しい説明は省いていました。ここで改めてdetailsに説明します。

並進を伴わないsymmetry element

 並進を伴わないsymmetry elementには、恒等、centre of symmetry、鏡映、回転、回反があります。このうち、並進と両立する (crystalに存在する) 要素はbelowの通りです。

名称 表記 説明
恒等 (1) 360°回転と同義
centre of symmetry (bar{1} (=i)) 360°回反と同義
(i)と表現することもある
鏡映 (m (=bar{2})) 180°回反と同義
回転 (2), (3), (4), (6) 回転の次数 (360°/回転角度) で表現
回反 (bar{1} (=i)), (bar{2} (=m)), (bar{3}), (bar{4}), (bar{6}), 回転の次数 (360°/回転角度) で表現

恒等要素は回転要素の一種と見なすことができ、鏡映とcentre of symmetryは回反の一種と見なすことができますので、これらをまとめて説明します。


回転、恒等

 Hermann-Mauguin (HM) 記法では、記号 (n) は 𝑛次の回転 (n-fold rotation) 要素を意味します。並進対称と両立する回転の次数は 1, 2, 3, 4, 6 です。belowは、各回転要素の性質を図示したものです。

図の読み方を補足します。


回反、centre of symmetry、鏡映

 HM 記法では、記号 (bar{n}) は 𝑛次の回反(n-fold rotoinversion)を意味します。回反とは、回転に引き続きcentre of symmetryをおこなう操作のことです。「して転」と覚えましょう。belowに各回反要素のgeneral positionを図示します。

symmetry elementの記号は回転の説明と同じく緑色で表現しています。below、補足説明です。

回映

 余談ですが、回反要素と似たような概念の仲間がいます。「回映 (𝑛-fold rotoreflection)」というsymmetry elementです。Schoenflies記法では、記号 (S_n) はn次の回映を意味します。回映操作とは、回転に引き続き鏡映を行う操作のことです。「して鏡」と覚えましょう。

 回反はSchoenflies記法では表現できず、回映はHM 記法では表現できません。where、「角度(theta)の回転の後に鏡映」を行うという操作は、「(theta+180^circ)の回転の後にcentre of symmetry」を行う操作と等価です。i.e.,、rotoinversion operationと回映操作は、回転の位相が(180^circ)異なる場合に等価となります(反転の点は反射平面内にあるものとする)。 アフィン変換(4×4行列)でrotoinversion operationや回映操作を表現すると、belowの通りとなります。

$$
bar{1}=S_2= begin{pmatrix}
-1&0&0&0\ 0&-1&0&0\ 0&0&-1&0\ 0&0&0&1
end{pmatrix}quad
bar{2}=S_1= begin{pmatrix}
1&0&0&0\ 0&1&0&0\ 0&0&-1&0\ 0&0&0&1
end{pmatrix}quad
bar{4}=S_4= begin{pmatrix}
0&1&0&0\ -1&0&0&0\ 0&0&-1&0\ 0&0&0&1
end{pmatrix}
$$

$$
bar{3}=S_6= begin{pmatrix}
1/2&sqrt{3}/2&0&0\ -sqrt{3}/2&1/2&0&0\ 0&0&-1&0\ 0&0&0&1
end{pmatrix}quad
bar{6}=S_3= begin{pmatrix}
-1/2&-sqrt{3}/2&0&0\ sqrt{3}/2&-1/2&0&0\ 0&0&1&0\ 0&0&0&1
end{pmatrix}
$$

belowに対応表をまとめます。

Hermann-Mauguin
(HM)記法
Schoenflies
記法
(bar{1} = i) (S_2 = C_i)
(bar{2} = m) (S_i = C_s)
(bar{4}) (S_4)
(bar{3} =3cdot i) (S_6 = C_{3i})
(bar{6}=3/m) (S_3 = C_{3h})

並進を伴うsymmetry element

 並進を伴うsymmetry elementには格子並進、らせん、映進があります。

名称 表記 説明
格子
並進
(P)
(A, B, C)
(I)
(F)
(R)
単純格子
底心格子
体心格子
面心格子
菱面格子
らせん (2_1)
(3_1), (3_2)
(4_1), (4_2), (4_3)
(6_1), (6_2), (6_3), (6_4), (6_5)
ひとつめの数字は回転の次数、ふたつめの数字は並進割合
(並進量 = 軸方向の周期 × ふたつめの数字 / ひとつめの数字)
映進 (a), (b), (c)
(n)
(e)
(d)
軸映進面
対角映進面
二軸映進面
ダイヤモンド映進面

普通は格子並進から説明を始めるところですが、少し順番を変えて先にらせんの説明を済ませてから、格子並進と映進を説明します。


らせん

 らせん要素は、二つの数字で表現されます。ひとつめの数字は回転の次数に対応し、ふたつめの数字(下付き)は並進量に対応します。screw axisの方向は、かならずcrystal中の並進ベクトル(lattice pointとlattice pointを結ぶベクトル)の方向と一致します。らせん要素の並進量は、screw axisに沿った並進の最小周期に対する「ふたつめ数字 / ひとつめの数字」と定義されます。たとえば、(4_3) というsymmetry elementを有するcrystalは、「90°回転し、軸に沿って軸の周期の3/4だけ進む」という操作によって不変に保たれます。発音は、Ex.えば (4_3) の場合、「よんさん(らせん)」、「four sub three (screw)」 などが普通です。

 簡単そうに見えて意外と勘違しやすいのがらせん要素です。Ex.えば、(6_1) 要素が (2_1) 要素を含むことや、(4_2) 要素が (2_1) 要素を含まないことを、説明できるでしょうか?自信がない方は、belowにらせんのsymmetry elementを図示しますので、じっくり眺めてください。Note:、このページでは、紙面垂直手前に向かって右ねじの方向でscrew axisを描きます。

 まず、次数が2と3のscrew axisです。

緑色の、風車のような記号がscrew axisのsymmetry elementです。below、図の読み方に関する補足です。

 次は、次数が6のscrew axisです。

図の読み方 は、もう補足説明は要らないでしょう。白丸や点丸の配置をよく見ると、Ex.えば(6_3)は(3)や(2_1)の要素を含むことがわかります。

 最後に、次数が4のscrew axisです。

(4_1)と(4_3)は (2_1)の要素を含み、(4_2) は (2)の要素を含んでいることがわかりますね。


格子並進

 crystalであれば必ず有しているsymmetry elementが、格子並進要素です。格子並進要素には、 (P), (A), (B), (C), (I), (F), (R) の7種類が存在します。

 (P) はもっとも単純な格子並進であり、単純格子並進と呼ばれます。右 (小画面端末では下) のFigure:、単純格子並進のgeneral positionを示しています。灰色の長方形はunit cellを表しており、左上を原点として下方向が(textbf{a}) 軸、右方向が (textbf{b}) 軸の方向です。右手座標系では、紙面手前方向が (textbf{c}) 軸の方向になります。general positionは、これまでの図と同様に高さ情報付きの白丸で表されており、(textbf{a}) 軸、 (textbf{b}) 軸、および (textbf{c}) 軸の並進によってお隣のunit cellに移されます。Note:、(textbf{c}) 軸方向(画面垂直方向)にも一般点は無限に存在しますが、高さが0以上1未満の場合のみを表記しています。

 さて単純格子並進 (P) に対して、残りの6種類は全て複合格子です。複合格子は (P) のもつ性質 ((textbf{a}), (textbf{b}), (textbf{c}) の並進) に加えてさらに一つ以上の並進が存在し、unit cell内に2つ以上のgeneral position (lattice point) を含みます。まず、底心格子並進 (A), (B), (C) のgeneral positionを示します。

ご覧のように、unit cell内に二つのgeneral positionが存在します。単純格子並進に加えて、(A) では (frac{1}{2}(textbf{b}+textbf{c})) 並進が、(B) では (frac{1}{2}(textbf{c}+textbf{a})) 並進が、(C) では (frac{1}{2}(textbf{a}+textbf{b})) 並進が加わっています。

 最後に、 格子並進 (I), (F), (R) のgeneral positionを示します。

(I) 格子では (frac{1}{2}(textbf{a}+textbf{b}+textbf{c})) の並進が加わり、unit cell内のgeneral positionは二つです。(F) 格子では (frac{1}{2}(textbf{a}+textbf{b})), (frac{1}{2}(textbf{c}+textbf{a})), (frac{1}{2}(textbf{b}+textbf{c})) という三つの並進が加わり、general positionは四つです。(R) 格子は、trigonal crystal systemの六方格子設定にのみ現れるsymmetry elementです。六方格子設定は (textbf{a}) と (textbf{b}) は長さが等しく120°交わります。 (frac{2}{3}textbf{a}+frac{1}{3}textbf{b}+frac{1}{3}textbf{c}) と (frac{1}{3}textbf{a}+frac{2}{3}textbf{b}+frac{2}{3}textbf{c}) の並進が加わっています。


映進

 映進は、鏡のように映ったあと、そこで終わらずに面に沿って進む(並進)というsymmetry operationです。「ってむ」、と覚えましょう。symmetry element記号は、(a. b, c, n, e, d) のいずれかです。これらの記号は並進の方向に対応しており、映進面の対称方向(法線方向)の情報は含まないということに注意しましょう。 

軸映進 ((a), (b), (c))

 軸映進 (axis glide) は、鏡映に引き続き (textbf{a}), (textbf{b}), (textbf{c}) のいずれかの方向にその周期の1/2だけ並進します。それらの方向に対応して (a), (b), (c) と表記します。3種類すべてを説明するのは冗長なので、ここでは (c) 映進をEx.を説明します。

 次のFigure:、紙面に平行で高さがゼロの (c) 映進面が存在する状況を示しています。灰色の長方形はunit cellを表し、下方向が (textbf{c}) 軸、右方向が (textbf{a}) あるいは (textbf{b}) 軸、紙面垂直方向が (textbf{b}) あるいは (textbf{a}) 軸です。つまり (c) の対称方向(法線方向) は (textbf{b}) か (textbf{a}) のどちらかですが、symmetry element記号だけでは判断できずunit cellの投影方向を考慮する必要があります。図中左上のカギカッコに矢印を付けた緑色の記号がsymmetry element記号です。矢印の方向は並進方向を表しており、この場合は当然 (textbf{c}) 軸(下向き)の方向です。この映進によって白丸 (高さ(+z))は点丸 (高さ(-z))に写されています。

 今度は、紙面平行ではなく、紙面垂直に (c) 映進面が存在する状況です。unit cellの向きは先ほどと同じです。緑色の長破線で示されているsymmetry element記号は、並進方向が紙面に沿った方向であることを意味し、この場合は下向き ( (textbf{c}) 軸)です。この映進によって白丸 (高さ(+z))は点丸 (高さ(+z))に写されています。

 ここまでの二つのFigure:、並進方向は下向きでしたが、 並進方向が紙面垂直の状況を表現したい場合もあります。次のFigure:、 (textbf{c}) 軸が紙面垂直方向である場合の (c) 映進面のgeneral positionを示しています。右方向と下方向は (textbf{b}) あるいは (textbf{a}) 軸であり、紙面垂直方向が (textbf{c}) 軸です。緑色の短破線で示されたsymmetry element記号は、並進方向が紙面垂直方向(つまり (textbf{c}) 軸)であることを意味します。この映進によって白丸 (高さ(+z))は点丸 (高さ(1/2+z))に写されています。ここまでに示した3つのFigure:、投影する方向が違うだけで、どれも同じ情報を表していることにご注意下さい。

 最後に、軸映進の対称方向が (textbf{a}), (textbf{b}), (textbf{c}) 軸のいずれか二つの合成方向になることケースを紹介します。このようなケースは正方格子、六方格子あるいは立方格子にみられます。

次のFigure:、正方格子(左)あるいは六方格子(右)において、([110]) 方向を対称方向とする (c) 映進面が存在する状況を示しています。いずれも (textbf{c}) 軸は紙面垂直ですので、symmetry elementは短破線で示されます。映進によって白丸 (高さ(+z))は点丸 (高さ(1/2+z))に写されています。 

対角映進 ((n))

 対角映進 (diagonal glide) は (n) と表記します。この要素は、鏡映に引き続き、対称方向と直交する二つの並進ベクトルの合成ベクトルの1/2だけ並進するようなsymmetry elementです。非常にわかりにくい定義ですね。たとえば、(n) 映進面の対称方向が (textbf{b}) 軸で、 (textbf{a}) と (textbf{c}) 軸がそれに直交する場合、並進ベクトルは (frac{1}{2} (textbf{a}+textbf{c})) であるということです。 対称方向に直交する2本の軸が作る平行四辺形の対角線方向に並進するのでこの名前がついています。(n) という記号から対称方向はもちろんのこと並進方向を読み取ることもできませんから、どういう文脈で使われているかを読み取ることが重要です。

 次の二つのFigure:、(n) 映進面の対称方向が紙面垂直であるケース (左)と、紙面平行のケース (右) です。(textbf{a}), (textbf{b}), (textbf{c}) 軸は右、下、紙面垂直方向のいずれかに対応します。symmetry element記号は、前者はカギ括弧と対角線方向の矢印で表し、後者は点破線1で表します。2つのFigure:、投影方向が異なるだけで同じ情報を表しています。

 軸映進の場合と同様に、対称方向が(textbf{a}), (textbf{b}), (textbf{c}) 軸と一致しない場合もあります。次のFigure:、正方格子(左)あるいは六方格子(右)において、([110]) 方向を対称方向とする (n) 映進面を示しています。並進が (frac{1}{2}(pmtextbf{a}mptextbf{b}+textbf{c})) であることにご注意ください。

 最後に (n) 映進と複合格子の関係 説明します。複合格子は (textbf{a}), (textbf{b}), (textbf{c}) 以外に余分な格子並進ベクトルを有しますが、その余分な格子並進ベクトルと (n) 映進の並進ベクトルが一致するケースを考慮する必要はありません。たとえば、(c) 軸垂直な (n) 映進面を有する (C) 底心格子を考えてみましょう。どちらも並進ベクトルは (frac{1}{2}(textbf{a}+textbf{b})) です。作図すると次のようになりますが、よく見るとこれは単に (c) 軸垂直な鏡映 (m) が作用したとみなすことができますよね。わざわざ (n) 映進面を持ち出す必要はありません。このように格子並進ベクトルと (n) 映進の並進ベクトルが一致した場合、(n) 映進は必ず鏡映 (m) で置き換えることができます。

それでは、 (frac{1}{2}(textbf{a}+textbf{b})) の半分 (つまり(frac{1}{4}(textbf{a}+textbf{b}))) が、鏡映後の並進だったらどうなるんだろう?と考えたあなたは鋭いです。実はそれが後述するダイヤモンド映進面なのです。

二重映進 ((e))

 二重映進 (double glide) は、(e) と表記します。この要素は (textbf{a}), (textbf{b}), (textbf{c}) 軸が互いに直交する格子系にのみ存在し、対称方向は (textbf{a}), (textbf{b}), (textbf{c}) 軸のいずれかです。これまで説明した軸映進や対角映進と大きく異なる点は、並進ベクトルが2つあることです。i.e.,対称方向と直交する2本の軸はどちらも並進方向であり、並進量はそれぞれの1/2です。その結果、軸映進や対角映進ではunit cell内に二つの等価位置が現れましたが、二重映進では四つの等価位置が現れます。たとえば、対称方向が (textbf{c}) 軸の場合、並進ベクトルは (frac{1}{2}textbf{a}) と (frac{1}{2}textbf{b}) の二つです。要するに軸映進がダブルになったということですね。

 次のFigure:、(e) 映進面の対称方向が紙面垂直であるケース (左)と、紙面平行のケース (右) です。symmetry element記号は、前者は2方向矢印で表し、後者は二重点破線で表します。unit cell内に 4つの等価位置が現れていることがわかります。

 もう少しこのsymmetry elementを考察してみましょう。白丸の位置関係に注目すると、底心格子並進の関係になっていることがわかるでしょうか?同様に点丸 も底心格子並進の対称性を満たしています。つまり、(e) 映進の作用によって必ず底心格子要素も加わってしまう2のです。たとえばあるcrystalの (textbf{c}) 軸を対称方向とする (e) 映進が存在すれば、そのcrystalは必ず (C) 底心格子であるということです。(e) 映進が二つ以上の軸方向に存在すれば (F) 面心格子になりますし、二つの軸の対角方向(Ex.えば正方や立方の([110]))に存在すれば (I) 体心格子になります。言い換えると (e) 映進を有するspace groupは必ず複合格子 ((A,B,C,I,F) のいずれか) を持ちます3

 ちなみに、(e) というsymmetry element記号は1992年以降に使用されるようになりました。その結果、次の5つのspace group は1992年を境にして表記が変わる4というややこしい状況になっていますので、古い文献を読む場合はお気を付けください。

space group番号 39 41 64 67 68
1992以前 (Abm2) (Aba2) (Cmca) (Cmma) (Ccca)
1992以降 (Aem2) (Aea2) (Cmce) (Cmme) (Ccce)

ダイヤモンド映進 ((d))

 最後はダイヤモンド映進(diamond glide)です。(d) と表記します。二重映進の場合と同様に、(d) 映進要素を有するspace groupは複合格子 ((I,F) のいずれか) に限られます5。この要素は、鏡映に引き続き、 (textbf{a}), (textbf{b}), (textbf{c}) 以外の複合格子並進ベクトルの1/2だけ並進します。(textbf{a}), (textbf{b}), (textbf{c}) 以外の複合格子並進ベクトルとは、(I) の場合は (frac{1}{2}(textbf{a}+textbf{b}+textbf{c})) であり、(F) の場合は (frac{1}{2}(textbf{a}+textbf{b})), (frac{1}{2}(textbf{b}+textbf{c})) , (frac{1}{2}(textbf{c}+textbf{a})) のいずれかです。これらのさらに半分が (d) 映進の並進ベクトルということです。もう一つ、(d) 映進面には特異な性質があります。それは必ず複数枚のセットで存在する必要があるということです。なかなか文章だけでは分かりにくいので、belowに図を用いて説明します。

 具体Ex.として (F) 面心格子のcrystalが (textbf{c}) 軸に垂直な (d) 映進を有するという状況を考えてみましょう。この場合、(d) 映進の並進ベクトルは (frac{1}{4}(textbf{a}+textbf{b})) となります。このcrystalを (textbf{c}) 軸から投影したのが次の図です。下方向が (textbf{a}) 軸、右方向が (textbf{b}) 軸です。(d) 映進面は紙面から (frac{1}{2}) の高さにあるとします。そのsymmetry element記号は (n) 映進と同じくカギ括弧と対角線方向の矢印で表し6、 高さの情報 (frac{1}{2}) を添えます。unit cell中の四つの白丸は、(F) 面心格子のgeneral positionに対応します。これに (d) 映進が作用して四つの点丸が生成していると考えることができます。

 こちらのFigure:、上と全く同じ状況を、(textbf{b}) 軸から投影したものです。今度は原点が右上になって、下方向が (textbf{a}) 軸、左方向が (textbf{c}) 軸、垂直手前方向が (textbf{b}) 軸ということになります。(d) 映進面のsymmetry element記号は矢印付き点破線で表現されています。矢印の方向に、高さが+1/4ずつ変化していることにご注意ください。配置は異なりますが、unit cell中には (F) 面心格子のgeneral positionに対応する四つの白丸と、(d) 映進によって写された四つの点丸が存在します。

 さて、上の二つの図をじっくり見てください。(frac{1}{4}(textbf{a}+textbf{b})) だけではなくて、 (frac{1}{4}(textbf{a}-textbf{b})) の方向にも、映進が存在することに気づくでしょうか。i.e.,上の二つの図の完全版は次のようになります。symmetry element記号もこちらが正式な書き方です。

 大変回りくどい説明になりましたが、以上のように (d) 映進は同じsymmetry element方向に必ず複数枚存在します。それらはsymmetry element方向の周期の1/4ずつ離れており、並進ベクトルが交互 (Ex.えば(frac{1}{4}(textbf{a}+textbf{b})) と (frac{1}{4}(textbf{a}-textbf{b}))) に変化します。Note:、(d) 映進が (I) 体心格子の正方・cubic crystal systemの ([110]) (および([1bar{1}0])) 方向に垂直に存在する場合もあるのですが、考え方は全く同じなので省略します。

映進面の種類と対称方向

 全ての映進があらゆる対称方向に存在できるわけではありません。Ex.えば (a) 映進面は、(textbf{a}) 軸の方向に並進するわけですから、映進面の対称方向(法線方向)と (textbf{a}) は直交している必要があります。(textbf{a}) 軸を対称方向とする (a) 映進面は存在しません。belowに、どのcrystal類(point group)のどの対称方向(主軸、副軸)に、どの映進面が現れる可能性があるかをまとめました。Note:映進面が全く現れないcrystal類は省略しています。

単斜

crystal類 主軸: (textbf{b})
(m), (2/m) (a,c,n)

直方

crystal類 主軸: (textbf{a}) 副軸1: (textbf{b}) 副軸2: (textbf{c})
(mm2) (b,c,n,e,d) (a,c,n,e,d)
(mmm) (b,c,n,e,d) (a,c,n,e,d) (a,b,n,e,d)

正方

crystal類 主軸: (textbf{c}) 副軸1: (textbf{a}) (=(textbf{b})) 副軸2: (langle110rangle)
(4/m) (a,b,n)
(4mm) (a,b,c,n) (c,n,d)
(bar{4}2m) (bar{4}2m) (c,n,d)
(bar{4}m2) (a,b,c,n)
(4/mmm) (a,b,n) (a,b,c,n) (c,n,d)

立方

crystal類 主軸: (textbf{c})(=(textbf{a})=(textbf{b})) 副軸1: (langle111rangle) 副軸2: (langle110rangle)
(mbar{3}) (a,b,n,d)
(bar{4}3m) (c,n,d)
(mbar{3}m) (a,b,n,d) (c,n,d)

三方、六方

crystal類 主軸: (textbf{c}) 副軸1: (textbf{a})(=(textbf{b})=([bar{1}bar{1}0])) 副軸2: (langle1bar{1}0rangle)
(3m) (3m1) (c)
(31m) (a,c,n)
(3m) (c,n)
(bar{3}m) (bar{3}m1) (c)
(bar{3}1m) (a,c,n)
(bar{3}m) (c,n)
(6mm), (6/mmm) (c) (c)
(bar{6}m2) (bar{6}m2) (c)
(bar{6}2m) (c)

symmetry element間の関係

 いくつかのsymmetry elementの間には、「含む/含まれる」という関係性が存在します。Ex.えば (4) というsymmetry elementを有する物体は、90°, 180°, 270°, 360°のrotation operationを許すということなので、当然 (2) というsymmetry elementも有しています。つまり (4) は (2) を含んでいるわけですが、通常は上位のsymmetry elementのみを記載すれば十分です。belowに、このような関係を図で表現しました。

線で結ばれているふたつのsymmetry elementは、上位の要素が下位の要素を含むという関係性があります。最下位には当然 (1) が存在しており、本来であればすべてのsymmetry elementを下向きの線で結ぶべきなのですが、図が複雑になるために省略しています。


Footnotes

  1. 紙面平行な軸映進の場合は短破線と長破線を使いわけることで並進方向を区別しますが、(n) 映進の場合は点破線の一種類だけで十分です。 ↩︎
  2. 当然ながら、底心格子要素があるからといって必ず (e) 映進が存在するわけではありません。 ↩︎
  3. (e) 映進要素は、(A), (B), (C) あるいは (F) 格子の直方晶系に属するspace groupの一部、(I) 格子のtetragonal crystal systemに属するspace groupの一部、(I) あるいは (F) 格子のcubic crystal systemに属するspace groupの一部に現れます。 ↩︎
  4. space group記号中のsymmetry elementが「generator」の意味合いを持つことを考慮すれば、別に (Aem2) (現在の公式表記) を (Abm2) (過去の公式表記) あるいは (Acm2) (非公式の表記) と表現しても大きな問題は生じません。どの表記を解釈しても、同じspace groupの構造を生成することができます。ただ (Acm2) ではなく (Abm2) を優先する納得のいく理屈はありませんし、systematic absencesを読み間違える可能性も高くなるので、一層のこと (Aem2) という新表記を採用したということです。 ↩︎
  5. (d) 映進要素は、(F) 格子の直方晶系に属するspace groupの一部、(I) 格子のtetragonal crystal systemに属するspace group一部、(I) あるいは (F) 格子のcubic crystal systemに属するspace groupの一部に現れます。  ↩︎
  6. 同じでいいの?混乱しない?と思われるかもしれませんが、そもそも映進記号中の矢印は、「映進の並進ベクトルが矢印方向の最小並進ベクトルの半分」であるという意味なのです。この図の場合、最小並進ベクトルは (frac{1}{2}(textbf{a}+textbf{b})) ですから、映進の並進ベクトルは (frac{1}{4}(textbf{a}+textbf{b})) となります。 ↩︎
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